2011年8月15日月曜日

権力を握る人の法則(書評)

私が尊敬するアメリカの人材マネジメントの学者のひとり、ジェフリー・フェファーが「権力を握る人の法則」という本を書いた。この本を読んで、正直驚いた。彼の「隠れた人材価値」や「人材を生かす企業」をイメージしていた私にとって、この本はポップス歌手がいきなりハードロックを歌いだすような衝撃があった。

フェファー教授は西海岸のスタンフォード大学のMBAで教えており、継続的に高い業績をあげる企業の仕組みには普遍性があるというハイパフォーマンス・ワークシステムの提唱者として有名だ。ハイパフォーマンス・ワークシステムは、シリコンバレーの文化に影響を受けてか、性善説に基づく人材マネジメント(成果主義バリバリというより、信頼をベースにし、人材の能力を最大限に生かすにはどうすれば良いかという発想)の印象が強い。グレートプレイストゥワークのリストの上位に入ってくるような企業をイメージしてもらえれば分かりやすい。

一方の戦略人事はもっとマキュベリチックな現実主義で、コーネル大学などの東海岸の大学が中心になって研究している。東海岸にはGEIBMなどの歴史が長い伝統的な企業が多いので、学者の研究対象もそのような企業が中心になる。こちらは、フォーチュンの最も称賛される企業リストの上位にランクしているような企業をイメージしてもらいたい。

さて、ハードロック歌手としてのフェファー教授の評価はいかに?教授の膨大なリサーチを基に実務家にすぐ役立つ内容を提供する姿勢は全く変わっていない。相変わらずとても実践的で素晴らしい。ハードロック歌手としても十分合格だ。

この本でのフェファー教授の主張は、仕事ができて人格的に優れていても、政治的にうまく立ち回れないと組織では成功できないとのこと。そのためには、人より目立つこと(出る杭になる)、役立つ人脈を構築すること、人を褒めること、周りからの評判を良くするためのイメージ作りなどが必要としている。

確かに、組織にいると、「この人は出世する」と思った人ではなく、「え?あの人が?」というような人が出世街道にのることはある。強い企業はタレント・マネジメントがしっかりしているので、これが少ない気もするのだが。。出世するには、人格を磨くことの他に、組織内のポリティクスをうまく処理できるようにならなければいけないのだと改めて感じた。

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