2011年6月18日土曜日

新時代の差別化戦略

想像してください。どこにでもある、人通りもまばらな寂れた商店街の一角。普段は誰も意識せずに通り過ぎていく場所。私の家の近くにもそんな場所があります。しかし、この前、なぜかたくさんの人が並んでいた。「こんなところに何かあったかな?」。興味を持ったので、近づいてみると23坪ほどのスペースのパン屋さんがあることを発見した、その名も「ときどき」。

ときどきしか店を開けないパン屋さん。つぎにいつ開くかはパン屋さんの壁に貼られた紙を見るしかない。しかも、パン屋さんが開いていない時は、店の看板も中にしまってしまう。だから、私もこの場所を毎日のように歩いていても、今までパン屋さんがあるとは気が付かなかったのだ。パンの種類は6種類しかない。アンパン、クリームパン、オニオンパン、揚げパン、チョコもちパン、そして食パン。さらに、1人が買えるパンの個数に制限がある。価格は決して安くない、ひとつ180円~300円ほどで、駅やデパートにある大手チェーン店と変わらない。しかも、時間はオーナーが決めるので、オーナーにとっては自由度があるし、寂れた商店街の一角なのでテナント料も安い。

このパン屋を見ていると新時代の差別化戦略が見えてくる。一言で言えば、世の中と反対の方向へ動くこと、つまり常識の逆を行くことで目立っているのだ。1:営業時間短縮。ほとんどの店は客がこようがこまいが、機会損失を恐れて長時間、店を開けておく。顧客が便利なように、朝早く、夜遅くまで店を開くが、その分、余計に人件費や電気代などの店の維持費が掛かる。2:少量生産(わざと入手を困難にする)。普通は、たくさんの商品を買ってもらいたいので大量生産するが、そうすることで、売れ残りが出てしまう。また、いつでも商品を買えるので、特にスペシャル感がなく、口コミが発生しづらい。「ときどき」では商品はとても購入しづらいので、商品を手にした時に、なぜかとても嬉しく感じる。商品も必要以上に生産しないので、全部売り切ることができる。3:目立たない場所に店舗を構える。人通りの多い場所に店を構えるのがパン屋さんの常識だが、人にわざわざ足を運ばせる、リピーターを作ることで小規模ながらビジネスが成立している。

まとめると、売り上げはある一定規模をこえないが(あまり売りすぎるとスペシャル感がなくなる)、コストを徹底的に削減する(営業時間短縮、人件費削減、テナント料削減)ことで、大手以上の利益確保に成功しているのだ。このようなモデルをチェーン化すると、逆に日本のシャッター街が活性化すると思う今日この頃である。

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