2011年7月17日日曜日

インドで戦えますか?

日本人は研修や国際会議に参加しても発言をしない。これは世界の常識だ。私も研修・セミナー講師として、そんな経験を今まで重ねてきた。私が何度も質問を投げかけても、多くの日本人参加者は黙っていることが多い。この状況をいかに崩して双方向型(参加型)にするかが講師の腕の見せ所なのだが、セミナーの時間が短い場合などは、仕方なく講義形式で話を進めていくしかないことも多い。そして、セミナー終了後、「今日のセミナーは盛り上がらなかったな」と一瞬心理的に落ち込む。しかし、参加者のフィードバックを見ていつも驚く、なぜなら非常に良い評価で、鋭い意見や指摘が満載なのだから。「日本人は自分の考えていることをもっと素直に発言すれば良いのに」といつも思う。そのせいで、日本人は明らかに国際社会で損をしているのだから。

一方、今でも忘れられないのがGoogleインドでの経験。約1年半前に、私にとって初めてのインドでのリーダーシップ研修のファシリテーションを行った。私は、研修当日の朝、ドキドキしながら約30人のインド人参加者の前に講師として立っていた。男女約半々、カラフルなインドの民族衣装を着ている参加者もいれば、T-shirt・短パン姿の人もいる。「いやー、なんでインドでの研修講師引き受けたんだろう。無謀だよ」と一瞬思ったが、もう逃げ出すことはできない。

私は簡単な自己紹介をすませて、研修をスタートさせた。 そして研修開始5分後、私は参加者の意見を聞いてみようと、What do you think?(どう思いますか?)と全員に向けて質問を投げかけた。その直後、私は自分の目を疑った。一斉に多くの参加者の手が上がり、早口のインド訛りの英語で意見を話し始めた。1人の参加者の話が途切れた0.5秒の隙間に、別の参加者が話し始める。そして、勝手に周りとディスカッションをはじめる人達も出てきた。私の存在はそこにはない。私はあせった。「カオスだ。もうお手上げだ」。時間はどんどん過ぎていく。研修の目的からどんどん外れた方向にディスカッションが進んでいく。「もう降参するしかない」と恐れに支配されそうになった。

しかし、もう一人の心の中の自分が話しかけてきた。「ここであきらめる訳にはいかないだろ。勇気を出せよ」そして、ここは関西ジョーク?を一発飛ばしてやれと思った。もうどうにでもなれ。「みなさん!日本では私が質問を参加者に投げかけたら、シーンとして誰も答えないけど、インドは真逆ですね。凄いディスカッションだ。もしかしたら、ファシリテーターの私いらないかも??」と茶目っ気たっぷりに言った。すると、どっと大きな笑いがおきた。まずは、参加者の意識を自分に向けさせることに成功したのだ。そして、私は日本の柔道選手のように一気に「一本」を狙いにいった。

「国際会議の議長として成功するには、発言しない日本人にいかに発言させ、発言し過ぎるインド人の発言を管理する力が求められると良く言われているが、まさに今の私に求められていることだと思う」私は、参加者全員の頭の中のランプに灯りがともり、「なるほど!」と感心しているのが分かった。「一本」!心の中の審判が叫んだ。

まずは笑いをとり、そして日本とインドという国を世界の視点から真面目に対比させることで、私の講師としての信頼が一気に増したのだった。つまり、He Knows what he is talking about(この講師は物事を良く理解している)と参加者が感じたのだ。それ以降は、研修参加者は私の意見に耳をしっかり傾けるようになり、この研修は大成功に終わった。やはり、恐れに支配されそうになった時に、諦めずポジティブなエネルギー(笑い)の力を信じて前に進むことが大事なのだと思う。

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